そんなに頑張らなくても、、 sakurairo20さんのブログをみて思い出した。
父が中学高校大学と山岳部、母もワンダーフォーゲル部だったせいで、
幼いころはよく、丹沢や近くのちょっとした岩場や山の散歩道に
連れて行かれたものだ。
行った先での宿泊や飯盒炊爨、バーベキュー、川遊びなどは
楽しかった覚えがある。
それにしても結構それがスパルタで、登るときも降りるときも
選ぶ道筋に「センスがない」といわれ、歩けば「足の出し方がおかしい」といわれ、
あんまり楽しい山歩きではなくてすっかりしょげてイヤになり、
ある種のトラウマとなっていた。
学生の時、ひょんなことから同級生と一緒に
2700mの北アルプスの山に行くことになった。
授業のとき、山岳部の部長と偶然隣に座って話をしてたら、
山の上がどんなに素晴らしいか、そして、
それがまたものすごく簡単に登れる、と力説され、
すっかり騙された。
この山行きは最低最悪のものとなった。
なんでも持っていっていいというのでラジカセから、テープから
いろいろリュックに詰めたら大体20kg近くになった。
当然、その友人が持ってくれるわけでなく、自分で背負う羽目になった。
最低だったのは、新宿から夜行で松本に行くのに、
新宿で飲み会をして、夜行電車の中でも飲み会をして
全然睡眠をとらなかったこと。
そして、朝、松本について登山口に行く間に、
なぜかみんな朝ごはんを買うのを忘れたこと。
また、朝から雨が降り出して、登るにつれて気温が急激に下がるのと相まって、
濡れたことで体力を相当消耗してしまった。
睡眠不足と空腹だけでもこたえるのに。
だんだん足にも力が入らなくなって、途中で置いていて欲しいといったが、
山岳部のその友人が絶対にそんなことはできないし、したら遭難する、という。
のろのろ進んでいったが、途中で本当にぐったりしてきた。
そこでその友人が取り出したのが、今でも忘れもしない、
「くず餅」であった。
山小屋や途中の小屋へのおみやげとして彼が大事に持っていたものだった。
止むに止まれず、私たちはそのうちのひと箱を大急ぎで雨のなか
山中の傾斜した坂で立ち止まって開けた。
雨がどさどさ落ちて餅にあたるのも気にせずに、
争いながらむさぼるように、その
「くず餅」を食べた。
最後は、きなこと餡が雨でうすまった汁を、奪い合って飲んだ。
今思い出すと笑えるが、はっきりいって究極の状況であった。
くず餅のおかげで体力も気力も回復し、
それからほどなくして途中の小屋についた。
ここで暖をとってお茶を飲んでいたら、おみやげにわれわれが差し出した
「くず餅」がだされた。人間というのは現金なもので、
いろいろ満たされてしまうと、ついさっき奪い合った物にさえ、
興味が失せてしまう。今度はみんなで譲り合った記憶がある。
そんな思いをして登った山の山頂での滞在は素晴らしい体験だった。
下界が雨でも、雲の上にいるため、日中は霧が下にみえるものの
快晴である。みえるのはひたすら空と、尾根づたいに連なる山ばかり。
足元には2-3種類の高山植物。
夜になると雲のずーっと下、まさに下界に遠い街の灯がうっすらみえる。
空は満点の星空。この世のものとは思えない、未知の世界であった。
風呂に入れなくても、雑魚寝しかできなくても、
TVがなくても、そんなことどうでもよくなってしまう、何かがあった。
翌年も懲りずに同じ山に登ったし、(もちろん準備万端整えて)
今度はちょっと縦走もしてみた。
このところ、仕事や日常生活に忙殺されて、
思い出すこともなかったが、また体力があるうちに行ってみたいと思う。
中高年の登山ブームって、わからなくもない。