Greg Osbyは1960年セントルイス出身のアルトサックス奏者で、80年代後半からSteeve Coleman等とM-Baseを形成し前衛的なジャズを展開して名を知られるようになった。Jack DeJonetteのSpecial Editionの一員として初来日したときにも、すでに確固たる独自のスタイルが垣間見られた。当時から非常に頭の回転の良い野心的な男だった。旋律転換法の多用やその後のヒップホップとのコラボレーション、ストリングスの導入など、偏執狂的に独自性にこだわり常に変化を求める演奏は、その野心に帰結するのではあるまいか。Jason Moranの発掘や若いミュージシャンの育成、Blue Note Lebelでのプロデュースなど90年代後半はまさに目を見張るような精力的な活動でオーラがあった。ただしその後、猜疑心から周囲のスタッフや同年代のミュージシャンとトラブルも多く、次第に疎んじられるようになったようだ。最近でもBlue NoteからCDをコンスタントに発表し、独特の世界を持つグレッグ・オズビー節はなお健在で力量も確かだが、一時の勢いは感じられなくなった。このところ日本では輸入盤しか手に入らず、福岡のみの公演しか行えなかった2001年を最後に来日もない。あれだけその場を緊迫感ある独自の世界に引きずり込めるミュージシャンはそうはいない。もう少しリラックスしてとんがった野心に治まりをつけることができたらもっと状況が改善していくと思う。才能の浪費をもったいなく感じる。